冷たいアナタの愛し方
雨にも濡れず、地面に足音も残さず、ジェラールの離宮に戻ったリヴィは、ベッドに戻らず階段を上がるとジェラールの部屋のドアをそっと開けた。


気配を完全に絶っているのでジェラールは気付いた様子もなく、よく眠っている。

まだ傷は完治していないので薬を飲んでいるせいもあるのだろうが…リヴィはジェラールの前に立って寝顔を覗き込んだ。



「あなたは…不思議な人ね。何かを感じるわ。何かしら…」


「……すぅ…すぅ…」


「オリビアが好き?あの子の盾になって守ってくれる覚悟があるのかしら?あなたが……………になるのかしら?」



ジェラールの耳元で何かを囁いたリヴィは、そっとジェラールの頬にキスをしてドアを閉めると階段を降りてベッドに座った。

ずっと待っていたのかシルバーは眠らずに壁に背中をくっつけて距離を取りながら上目遣いで見つめてくる。

この天狼がオリビアに拾われて育てられて、そして惚れ込んでいることを知っているリヴィは、シルバーに手を差し伸べて笑いかけた。


「お前は偉いわね。お前が居なかったら私がオリビアを守らざるを得なかったわ。そうなれば…オリビアの正体が露見して予期せぬ出来事が起きてしまう。ありがとう」


首を伸ばしてリヴィの手をぺろっと舐めたシルバーは、オリビアに見えてオリビアではないリヴィが首を抱いて顔を覗き込んできたのでさらに離れようとすると、額に手をあてられて不思議な力を感じて動きを止める。


「お前は最後の天狼。生涯オリビアを守って生きて。…お前に加護を」


シルバーの身体があたたかくて淡い光に包まれる。

母親の胎内に居るような安心感に包まれたシルバーは、そのままベッドに横になって眠ってしまった。

リヴィはウェルシュの返り血を浴びていないか鏡で入念にチェックすると、シルバーの隣に横になってぷにぷにの肉球に触れて瞳を閉じた。


「あの子の運命は決まっているの。だから、それまでは……」


一緒に生きてあげて。


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