冷たいアナタの愛し方
はじめてローレンではない場所で目覚めた。

目を開けるとシルバーから頬をぺろぺろ舐められて、ふかふかであたたかい銀色の毛に包まれたオリビアは、目を擦りながら部屋を出て辺りを窺う。


「ルーサーはもう行ったのかな…。垂れ目の怖い人はどうしたのかな…。お父様たちは…」


「起きたのかい?その格好で外に出るのはよした方がいいね、うちの連中はいつも女に飢えてるからさ」


エイダが2階から降りて来ると、女にしてはたくましい身体つきのエイダが人好きをする笑顔でオリビアをソファに誘う。


「今は息子やガレリアの王子は出払ってる。ほら今のうちに着替えな。これあたしが若い頃に来てた服だ。若い娘が脚なんか出して歩いてると襲われちまうからね」


白いパンツにジップアップの白いジャケットを貸してもらったオリビアは、意識が朦朧としていた時に彼女たちの仲間を傷つけてしまったことを憂いていた。

だがルーサーからそのことを話したり謝罪したりすればまずいことになるかもしれないと言われたいたのでそれには触れずに頭を下げる。


「助けてくれてありがとう。まだ何が起きたのかよくわからないけど…」


「あんたはガレリアに襲われて、ガレリアの者に救われた。ま、あたしたちもローレンを攻めるのには抵抗したんだよ。あんただけでも救えて良かったよ」


そう言葉を切ってからオリビアの表情が曇ったことに気づいたエイダは、オリビアの顎を取って顔を上げさせる。


「死んだとは限らない。あんたはここで待ってればいいんだよ。あたしが巣の中を案内してあげようか?」


「ううん、いい。シルバーと一緒に勝手に見て回るから」


にかっと笑ったエイダに心が打ち解けたオリビアは、温かいスープを貰った後借りた服に着替えてシルバーと一緒に外へ出た。

樹齢何百年…もしくは何千年だろうか――巨大な大木が列を成し、見上げても見上げてもてっぺんは見えないほどに高い。

葉も生い茂っているので巣の中は暗く、僅かに木漏れ日が差す程度。

あちこちから騎獣としているドラゴンたちの鳴き声が聞こえるが、オリビアは恐怖を感じるでもなく頭を下げたシルバーの背中に乗って散策を始めた。

非番の男たちからじろじろ見られたが、シルバーと一緒なら平気。

耳の後ろをかりかり掻いてやると嬉しそうに尻尾を揺らした。

ルーサーが父たちを見つけてくれることを願い、気丈にも笑顔を浮かべて胸を張った。
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