冷たいアナタの愛し方
「そういえばはじめて奴隷を買って来たそうだな。見せてみろ」


突然我が身の話になってオリビアは身を強張らせたが、ルーサーはコーヒーを口に運びながら柔和な笑みを浮かべてそれを一蹴した。


「まだ慣れていなくてお見せできるようなものではありません。兄上こそこれ以上奴隷たちを遊び半分で辱めたり殺したりしないで下さい。彼らが居るから僕たちはこうして食事をしたりできるんですから」


「はっ、奴隷なんかいくらでも替えが効くだろうが。ああそうそう、俺が即位したらお前を参謀にしてやる。お前の戦略は毎回大当たりだからな」


「……」


沈黙を決め込むルーサーに業を煮やしたウェルシュはナプキンをテーブルに投げつけると、荒々しい足音を立てて会食の間を出て行った。

レティとオリビアは食い散らかした朝食の後片付けをして、もったいないと思いつつも再びナイフとフォークを手に取ったルーサーを見ていると、目が合った。


「あいつが居ると美味しい食事も不味くなるからね。せめて僕が同席している間は君たちの身の安全は保障するよ」


ルーサーは奴隷たちをまるで平等の立場のように扱って守ってくれる。

故にルーサーはとても人気があって慕われているので、レティ含め給仕係の面々は皆深々と頭を下げていた。


「リヴィ、行くわよ」


レティに声をかけられて退出しようとした時、ルーサーが小さな声でぼそりと囁いた。


「後で迎えに行くから部屋に居て」


…特別扱いをされている――

皆が羨ましげな目で見つめてくるので、少し優越感を抱いてしまったオリビアはそんな浮ついた心を戒めながら地下に戻って皿洗いをした後、また粗末な朝食を食べて言われた通り一旦部屋に戻った。


「ルーサー……」


7年前一目惚れした初恋の人――

今もこの心を縛ってやまない男が会いに来てくれるのを心待ちにして、ベッドに横たわった。
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