「同じ空の下で…」

【イベントまで あと 29日】

翌日、一番乗りで事務所のカギを開けて部屋に入ると、誰かがまた日付を変えてくれていた。

一体、誰がやってくれてるのだろう…?

マメな人がやってくれてるんだなぁ…。

偉いなぁ…。

軽く感動しながら今日も入力作業準備をする。

自分専用のマグにココアを準備していると勢いよく、事務所のドアが開いた。


「お!それって、艶香がやってるんだ?」

忘れ物を取りに来たのか、蓮が事務所に現れた。


「おつかれ~!…あたしじゃないよ、誰かがやってるみたい。」

「…ふ~ん。あ、あったあった。さて、稽古に行ってきますっ!」

イベントに使うであろう道具を見つけると、蓮が私の方を見た。

「…ほ~い。頑張ってね~」

半ば、上の空で返事をする。

「あ、艶香、由美から伝言!」

「ん?」

「今度の土曜日、ランチ行くのに空けといてって。男子禁制だってさ。じゃぁね。」

「…あ、はいっ!分かった。いってらっしゃい!」

蓮の口から、いきなり由美の話題が出て驚きながら蓮を見ると既にそこには居なかった。

一人、事務所の中で入力作業をしているとタケルが入ってくる。

「…おお、何だかんだって、艶香があれ、やってるんだ?」

「…ううん、私じゃない。来た時にはもう、既に日付変わってたよ?」

「…えっ?じゃ、誰やってんだ?…ある意味、不気味だなぁ。」

「…タケルも知らないんだ?」

私は特に気にも留めてなかったが、タケルが不気味なんて言うので、全身に鳥肌が立った。
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