「同じ空の下で…」

初対面の時のおもむろに俺を嫌そうに見る目を思い出す。

…あの時は地雷を踏んでしまった気がして気が気じゃなかった。

そして、艶香ってヤツには踏み入れてはいけない見えないバリケードを感じた。

人を安易に寄せ付けない。



だけど…

実際は…弱くて脆い、ビードロのような人だった。

見えないバリケードはとても薄くて、うっかり力を入れてしまえばあっさりと壊れてしまうような脆さ。

2年もの間、浮気がちな彼氏に暴力を振るわれながらもジッと耐えるって…余程の精神力の持ち主だと思った。


本当は感動屋で、素直で…優しい。

ちゃんと場の空気も読めるし。

充分に洗練された女だった。

泣き虫だけど、ちゃんと自分の意思はある。

ぶれない軸を持った人だった。


多分、そのギャップに、惹かれたんだと思う。


バリケードを破り、少しずつ近付いてみれば、時々色気を感じたり、子供のみたいに思えたり…。

実は天然。

幼稚園児のように、艶香をからかうとまんまと思い通りの反応を見せてくれる。


決して華やかな容姿ではないけど、凛として咲き誇る花を想像させる。

高嶺の花ではないけど、いつか高値をつける花のような美しさを湛えていた。


話せば話すほど楽しくなってる自分が居て、気付いたら完全に惚れていた。


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