「同じ空の下で…」

「お言葉に甘えさせていただきます。」

タオルを借りると、濡れてしまったあちこちを拭いた。




「…思ったより、元気そうだね。」

激しく雨音が響く車内。

ワイパーは最高速でフロントガラスを行ったり来たりしている。

「元気だよ。あたしはすこぶる元気!」

「ちゃんとご飯食べてるかぁ?」

「食べてますって。」

「…でも、痩せたでしょ?」


ご名答…。


瞬が居なくなって2週間。

急にご飯を食べる事に興味が無くなって、少し小食気味になったのは本当だ。

そして、体重もデリケートな事に3キロも落ちた。

ストレスを感じて、スポーツジムに通い、ひたすら泳いでるせいもあるのかもしれないが…体重が前より減ってしまった事実はその通りだった。


「ちゃんと…ご飯食べないと駄目だよ。大体、艶香は鳥が餌をついばむみたいにチマチマと食べてるからなぁ…。」

「そんな事言われたって…タケルみたいに豪快に喰らうなんて真似は出来ないよ」


「せっかくだし…このまま焼肉でも食べに行くかっ?どうせ一人でご飯食べるんでしょ?勿論、奢る!!艶香、何か予定は?」

「…ないけど…。」



けど…けど…けど…。

ふと、里奈の事が頭を過る。

このまま『里奈の好きな人、タケル』と一緒にご飯を食べに行ってもいいのだろうか?
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