「同じ空の下で…」

・．━━†side高梨†━━．・

□ ・．━━†side高梨†━━．・


Rainy holidays…

こんなにも一日中雨が降って居ると、いい加減仕事もだらけてしまう。

土曜だというのに、オフィスに出向いて溜りにたまった決済処理をしながら深く溜息をつく。

椅子に深く腰掛けながら外の景色をぼんやりと眺めていた。

雨は一向に止む気配も無く、これから激しく降ろうという気配もない。

オフィスから一望できる眼下には、様々な傘の絨毯が拡がっていた。

走り去る影は、傘を差さずに雨を避ける人の姿…。

やめた、今日は帰ろう…───。




朝から雨が降っている。

今は霧雨のような、ミスト状の優しい雨が降っているが、どんな降り方であっても俺は雨の日が一番嫌いだ。


椅子から立ち上がると、自分の机上のパソコンを閉じ、文書をデスク内の引き出しに乱雑に入れるとキーロックした。

すぐにオフィスを出て、地下にある駐車場へと向かった。



雨の日の道路はほんとに込み合うものである。

ナビの渋滞情報に目を移せば、オフィス街を抜けるまでには相当時間がかかりそうだった。

煙草を咥え、運転席に肘をつきながら、気だるくハンドルを操作した。



ふと、窓の外に目を移した時の事である。


目の前に見覚えのある女性の姿を見つけた。


そう、村越さんの秘書の英艶香だった。


オフィスで見る姿と違う彼女の姿に、暫く目を逸らせずに居た。


雨の中を楽しそうに過ごす人間なんて、生まれて初めて見た気がする。


英艶香は、雨を楽しむかのように（もしくはまるで雨の妖精のようにもみえなくもない）、ゆっくりと歩をすすめながら微笑みを浮かべて歩いていた。



彼女に対して興味が湧いた瞬間だった。

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