「同じ空の下で…」

少し急ぎ気味で支度をして軽く朝食をとり、煙草を一服すると慌てるようにして部屋を出た。

そして少し急ぎ足で駅に向かう。


駅に着き、いつものように改札を抜け会社の方に向かう電車に乗り込んだ。

電車内は、相変わらずの人いきれで空気が重く、汗が一気に噴き出す感覚を覚える。


バッグを持ち直し、憂鬱な視線で私は窓の外に目を移した。


…今日のシアトルの空は、何色なんだろう・・・・────。


モノクロームに映る電車の窓の外は、相変わらず厚い雲に覆われていた。




何とかかんとか約束の時間の30分前には会社に着くと、一階のロビーの長椅子の所で、常務の到着を待った。


初めて目の当たりにする土曜の社内は、休日出勤をする軽装の社員が忙しそうに右へ左へと行き交っている。


コンクリートが湿ったような、雨上がりのアスファルトの匂いのような、梅雨時期特有の香りと、ひんやりとした空気が、やけに私の周りを取り巻いている。


静まり返っている一階フロアに聞き覚えのある足音が聞こえると、そこへ視線を向けた。


「おはようございます。」

立ち上がって常務の姿を確認し、私は深々と頭を下げた。

悠々と歩く常務はいつもよりはラフだけど、決して軽装ではないという、きちんとTPOを弁えた姿で私の方へ歩いてきた。



< 386 / 646 >

この作品をシェア

pagetop