「同じ空の下で…」

「……。」

「一緒に、着いて来てくれませんか?」











そう言われた瞬間、ずっと見えていたはずの瞬の顔が、一瞬見えなくなって目の前が真っ白になったのを覚えて居る。

瞬が放った言葉を理解するまでに、すごく時間を要した気もする。


じゃあ、さっき、車の中で言った事は何なの?と反論したい気持ちと、今、まさに人生初めてのプロポーズとやらをされているという歓喜の気持ちとが…入り混じって、上手く言葉が出せずに居て、言葉に詰まった私の目には、じわりじわりと涙が溢れて来てしまっていた。

「…また、泣く…。」

「…だって…なんで、急にそんなこと…。さっき…自由に恋しろとかなんとか…」

言ったばっかりじゃないの…!

「ずっと…葛藤してたんだ。だから、どっちもホントの俺の気持ちには変わりないけど…なんだか、自分自身が女々しい気がしてた…。」

そう言って、瞬は私の左手を手に取ると、その薬指に口付けをした。


「…寂しい想いをさせたくない。俺も、寂しくなりたくない。…距離を縮めていつも一緒の瞬間(トキ)を…過ごして、同じ景色を見たい、そして、艶香にも見せたい。だから…」


口づけたその左の薬指には、見覚えの無い、煌びやかな光を放つ白い宝石が飾られたリングがはめられていた。

そうだ、さっきの信号待ちの時に、密かにはめたのは、これだったんだ…。
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