「同じ空の下で…」

表情は、一切崩さずに…。

今の私は感情のないマリオネット状態だ。

会議の一部始終を全て聞き入れる覚悟で私は耳を傾ける。

時折、高梨の様子を伺いながら彼を観察するが、その表情はいつか見た鋭い眼光で、酷く険しさに溢れ、身震いさえ覚える。


表裏一体の姿の…高梨。

プライベートの顔と仕事の顔がこんなにも違う事に、ほんの少し尊敬の念を覚える。

数分前の出来事なんて、上手に隠す事ができるんだろうな…。

私はというと、さっきから頬の熱が、なかなかひいてくれない。

そんな中、本田営業本部長のプレゼンが始まり、部屋の灯かりがダウンしていく。


「我が社が提案する改訂案として・・・・」


聞き取りやすい、声のトーンと小気味よく歯切れの良い解説。

美しい程の、英語の発音。

同席している外国の方も、なるほど~とでも言うように、頷く様を見て本田さんの凄さを再認識する。

「…以上になります。では、続けて、Takanashi.coの専務様、お願い致します」

本田営業部長の仕事っぷりに引き込まれて居たので、高梨の名前を聞き、私は我に返った。

「ご紹介に預かりました、Takanashi.coの高梨と申します。我が社独自で造らせて頂きました開発案をご説明させて頂きます…」


背筋が伸び、眼鏡を掛け自信たっぷりに身振り手振りを交えながらのプレゼンをする高梨には、会議室に居る人々の目を惹いた。

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