「同じ空の下で…」

幸い、翌日は祝日だった事もあり深夜迄の作業が続いてもさほど次の日に影響する事は無かった。

それがせめてもの救いだ。


「じゃあ、とりあえず、今日は帰るね?」

PCを閉じ片付けると、私は帰り支度を始める。



「艶香、お前、どうやって帰るの?」

「タクシー拾うから大丈夫だよ。」

アウターのベルトを締めると誰の顔も見ずにブーツに右足を通した。


「馬鹿か。俺、送るよ。」

「いいよ、こんな時間に成ったし、皆も早く帰って休んだ方が・・・・」

「瞬に送って貰いなよ、艶香」


タケルは疲れた様子で、大の字にその場に寝そべって、私の方を見ながら言った。


「じゃあ、タケルは?どうするの?」

「俺は…始発までここで作業する。」

「じゃあ、艶香を送ったら、俺もここ戻るよ。」

「…なら、由美は俺が送る。」

嘉斗と由美は家が近い事もあり、由美は嘉斗に送って貰う事になった。

仕方なく、瞬を見ると私は頭を下げた。

「じゃあ…瞬・・・・お願いします。」


「当たり前だ。」




そして、今日、一体この人と何時間この車内で過ごさなければいけないのだろう…と思いながら、瞬の車に乗り込んだ。


「艶香、明日は休みだよな?」



車を暖気してる間、瞬が私の顔をマジマジと見た。

ああ…だから嫌なんだ。

このシチュエーションが苦手で仕方ない。



「休みだよ。」


なるべく瞬の顔を見ないようにしながら、私は答える。


やっぱり、タクシーを拾って帰れば良かったと・・・後悔しながら、私は煙草に火をつけた。
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