壊れかけの時計


―――と。

大学の門のあたりから黄色い悲鳴にも似た歓声が聞こえた。それは紛れもなく、女子のもので。

でも、興味はないから目は向けない。



「ねぇ……!花音!あれ、神楽くんじゃない!?」

その一言を聞いて、すぐさま顔を上げた。


「……う、そ」

私の独り言はまたもや黄色い歓声にかき消された。
あっち側に目を向けて、その男に視線を注げばどこからどう見ても千影だった。この私が彼を見間違えるはずがない。


「(企んでたのはこれか、)」


さて、どうしよう。


隣でキャッキャ騒いでる愛海を見ながら、私はうっすら冷や汗をかいていた。


とりあえず、騒がれている張本人にクレームのメールを送りつける。
『帰ったら説明してもらうから。』

すると、人ごみの中にいる彼と目があった。当然、私はそれを睨みつける。―――でも、彼は私しかわからないような、ふっと笑みを垂らす。


―――それにまた、胸がきゅんと疼いたのは内緒だ。

< 27 / 27 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

りぼん結び。

総文字数/51,487

恋愛(純愛)194ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop