Storm -ただ "あなた" のもとへ-
8.夜嵐

   *

退院をした日に綺樹はフェリックスと共にスペインへ渡った。

自分の治療のためにフェリックスを長くアメリカへ引き止めたため、業務が膨らんでしまい、その処理に、二人がかりでなければ捌けそうもないからであった。

こっちは構わないから、そっちを片付けて早く戻ってきて頂戴。

それがさやかの言葉だった。

スペインに戻ると早々に、当主健在を内外に見せつけるため、一つのパーティーを開いた。

あらゆる人々を招き、快気祝いの盛大なるパーティーだ。


「どうせならばとことんやって、趣味が悪いくらいにしてやる」


綺樹は自棄気味に言った。

その台詞にフェリックスは息を吐くように笑う。


「そりゃあ楽しみだ」


皮肉り、高見の見物を決め込んだ。

結局の所は、フェリックスの妹である、エリザベートの采配で、品のいいものに納まったが。
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