ヴァンパイアから吸婚されてます
1章 ヴァンパイアと家族になりました

新しい家族

あたしは緑川くるみ。元気いっぱい少しだけおっちょこちょいな高校2年生。
自分で言うのもおかしいけど、何にも無いところで転んじゃったり……結構恥かいてる……。

今日は新しい家族が家にくる日。
あたしのお母さんはあたしが小学生のとき死んじゃって…今はお父さん1人で育ててくれてる。
そのお父さんが同棲するの!
お父さんが言うには、少しの間同棲してから入籍するんだって。相手の人はすっごく美人らしい。
あと子供がいるんだって!仲良くなれるか不安だけど早く会ってみたいな〜。

──ピンポーン
夕日が差し込むキッチンに高らかなチャイムの音が広がる。
「はーい!今開けます!」あたしは急いで手に持ってたお皿をテーブルに置いて玄関の扉を開けた。
「くるみちゃん、よね?」扉の向こうには待ちわびていた人がいた。 お父さんの言ってた通りすっごい美人だ…。
「はい。そうです。中に入って下さい」
少しかたくなりながら女の人を家に招き入れる。
「……お邪魔します」
女の人の後ろからあたしと同い年ぐらいの男の子も入ってくる。
うわぁ……綺麗な目……。男の子の目は透き通るような青色をしてる。
その目を見てると、心臓が鷲掴みされたみたいに動けなくなった。
「何?俺の顔になんか付いてる?」
いきなり話しかけられて心臓がドキッって跳ねる。
「あ、あの、ごめんなさい!!」
あたしは慌てて目を逸らした。
大きく鳴り響く心臓の音を知らんぷりしてテーブルに料理を並べる。
気合い入れて作ったんだけど、気合い入れすぎて凄い早くできちゃった…。どうしよ……。
あたしがテーブルに並んだ料理たちとにらめっこしてると、不意に横から手が伸びてきた。
あたしは伸びてきた手の方を見た。手の主はさっきの男の子だった。
料理をつまみ食いしてる。「あっ!!こらっ暁!」
女の人が男の子をバシッって叩いた。
痛そう……。
暁と呼ばれた男の子は、女の人にお説教されてる。
「クスクス…」
その姿が面白くてクスクス笑ってると、
「何笑ってんだよ」
暁くんが苦笑い気味に言ってくる。
「だって面白いんだもん」
暁くんのお説教が終わりかけたとき、ガチャっと玄関の扉が開いた。
「ただいま〜。美紗さん、早いですね」
美紗さんって言うんだ。
お父さんはニコっと笑ってスーツの上着を脱いだ。
「さぁ、食べようか美紗さんと暁くんも」
あたしは2人の座る椅子を引いた。
「座って!美紗さん」
ちょっと気を利かせて美紗さんにはお父さんの隣の椅子に座って貰うように言った。
「もう、くるみちゃんたら」
そう言いながら頬を赤く染めた美紗さん。
やっぱり美人だ!
どんな表情も素敵〜。
「暁くんも座って」
あたしの隣の椅子を引いた。
すると暁くんが
「ありがと」
微笑みながらお礼を言ってくれた。
「どういたしまして」
あたしも笑顔を返した。
だけど美人の美紗さんの顔見ちゃったから自分が変な顔してないか凄い気になる……。
「くるみ?どうかした?難しい顔して」
お父さんが聞いてきた。
「ええぇぇ!?そんなに変な顔してる?」
大きな声で聞いた。
「うん。してたよ」
ガーン…
そうなの?
うちのお父さん、笑顔でそういうこと言っちゃうんだよね……。
「「クスクス」」
「美紗さん…暁くん…何でわらうの…」
ガックリと肩を落としていたあたしに聞こえたのは2人の笑い声だった。
「ごめんね。つい面白かっかから」
美紗さんが笑いながら言う。
あたしどんな顔してたの!?「さっきのお返し」
暁くんはさっきあたしが笑っちゃったことをまだ根に持ってるみたい……。
「う……」
言い返せないよぉ……。
「くるみはもう暁くんと仲良くなったんだね」
お父さんは今日一番の笑顔で、あたし達を見てた。
4人であたしが作った料理を食べた。
「美紗さん、お口に合いましたか?」
料理は上手い方だけど、口に合ったか心配……。
「とっても美味しかったわ!私より上手いんじゃないかってくらい」
大袈裟なほど誉めてくれる美紗さん。
そんなに誉められると
なんかくすぐったい……。「ありがとうございます」でも凄く嬉しい☆
「母さんのより旨かった」暁くんがぽつりと呟いた。「暁っ!!恥ずかしいこといわないでっ!」
美紗さんはまた顔を赤くしながら暁くんを怒る。
多分暁くんが一番食べてた。
「じゃあ、あたし片付けますね」
あたしが席を立つと、美紗さんが
「大丈夫よ。私達がするから」
美紗さんはお父さんの腕を掴んで立ち上がった。
どうしよ……。
こういう時はお言葉に甘えちゃっていいのかな?
「くるみと暁くんは一緒に部屋にあがってなさい」
お父さんが笑顔で言ってくる。

………………え?

………………今なんて?

………………い、一緒に!?「お父さん!?一緒にって!?」
同じ部屋!?
「一緒に寝ればいいでしょ?」
………無理、無理、ムリ、ムリ、むり、絶対むりぃぃ!!
あたしの部屋のベッドは二段ベッドだけど!
「無理だよ…」
「よろしく」
泣き言をもらすあたしの耳もとに息がかかってくすぐったい。
しかも言い方!!
何そのなにか企んでます感満載の言い方!!
でも考えていることとは裏腹に、何故か治まってきた心臓がまた悲鳴をあげていた。
「早く行きなさい」

あたしはお父さんに言われるがまま、暁くんを部屋まで連れていった。
部屋に行ったのはいいんだけど、なにこの沈黙……。気まずすぎる……。あたしはこの雰囲気をどうにかしたくて暁くんに話しかけた。
「暁くんごめんね。お父さんのせいで……」
同じ部屋なんて暁くんも嫌だろうな……。
元気が取り柄のあたしだけど、こればっかりは……ねぇ。
「暁でいい。で、別に嫌とかじゃねぇから」
へ?
「嫌じゃないの!?こんな可愛くも何ともない女と一緒なのに!?」
暁くん…いや暁の口から紡がれた言葉の意味を理解するのに少し時間がかかった。
「……可愛いと思うけど?」
暁が何か言ったみたいだけど……。
テンパっちゃって、うまく聞き取れなかった。
「何?」
聞き返したんだけど、なにも教えてくれない。
「何でもない」
気になる。
でも、置いといて
「あのさ、ベッド上でいい?あたし、いつも下だから…」
暁には内緒だけど、実は高所恐怖症なんです。
「ん、りょーかい」
……また沈黙がながれる。ずっと自分の手をギュッって握ってたから、手汗が…半端じゃない。
もうお風呂入ってこよう。「暁、あたしお風呂入ってこようと思うんだけど先いい?」
さっきから思うんだけどあたしばっかり話しかけてるよね。
ま、いっか。
「いいけど、その前に風呂の場所教えてくれね?」
「あっっ、ごめん。忘れてた…じゃ、必要最低限の場所教えておくね」
あたし達は部屋を出てお風呂、トイレなど色々な場所に行った。
「ありがと。大体分かった」
「どういたしまして。じゃあ、あたしお風呂入ってくるね」
あたしは着替えをとりに部屋に戻った。

その後あたしはお風呂に入って、今は暁がお風呂に入ってる。
「なんか暇だなぁー…」
暇だからテレビつけよ。
つけてみるとあたしの好きなドラマの再放送がしてる!!しかも感動の最終回。
これは見なきゃ。
じぃーっと見てるとクライマックスに差し掛かる。
『私…貴方とは結婚できない』
『何故ですか!?俺達はこんなに愛し合ってるのに!』『駄目なの…もう、もう決まっているの…私の許嫁』『え?…………………そんなのあんまりだ…』
『私…許嫁と結婚したくない。好きでもないのに』
『じゃあ、俺に付いてきてくれますか?』
『……でも』
『俺は…!!貴女が居ればなにも要らない!』
『私も!貴方が居れば…もう迷わないわ。私は一生貴方に付いていくわ』
『ありがとう。じゃあ、行こう一緒に。俺は死ぬまで貴女を愛し続ける』
『私も愛し続けるわ。もう貴方が離れろって言っても離れないからっ』
お嬢様と庶民の男の人が駆け落ちするんだよね…。
認められない恋って、すっごく悲しい。
「……っ…」
いっつもこのドラマ見たら泣いちゃうんだよね……。「くるみ?」
部屋の扉が開かれ暁がお風呂から戻ってきた。
「…グス…お帰り」
「何泣いてんだよ」
暁が心配してる。
「何でもないよ。ドラマに感動しちゃっただけ」
「なら、いいけど」
あたしはドラマが終わってすぐベッドにもぐり込んだ。
「暁、お休み…」
暁もベッドにのぼっていった。
なんだか今日疲れたな……。
何故だかこの日はすぐ深い眠りについた。

───ここどこ?
真っ暗な中
あたし1人だけ立ってる
周りに赤い光が数えられないほど沢山灯っている。
不気味…。
え……?
動けない…。
体を動かそうと必死になってたあたしに、沢山の影が襲いかかってきた。
体中の血を吸われてあたしは死んじゃった…。

「いやあぁぁぁぁっ!!」
ガバッと勢いよく起き上がった。部屋には太陽のの光が輝いていた。
…………夢か。
よかった…。
「どした?くるみ?」
さっきの叫び声で起こしちゃった見たい。
「ごめん…。変、な夢見ちゃって…」
暁が下のベッドにおりてくる。
「あれ?何でだろ?震えが止まんないや」
震えてる手をもう片方の手でおさえるけど止まらない。体も小刻みに震えてる。すると後ろから急に抱き締められた。
「暁?」
あったかい…。
すっごくあったかい…。
暁は何も言わずに抱き締め続けてくれた。

ありがとう。

震えが治まった後朝ごはんを食べた。
暁と並んで歩いて学校に向かった。
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