《短編》春夏秋冬
どういうつもりで言ってるのかは知らないが、イケメンがかっこいいこと言うと、その効力はすごいものだなと思う。

別にときめいたとかじゃないけどね。


ナツはいつもこうやって女の子たちを口説き落としているのだろうか。



「卑怯だよねぇ、ナツは」

「何が」

「ナツがモテてる理由が今ちょっとわかった気がするよ」

「モテてねぇし」

「モテてるよ。私知ってるんだから。よく告白されてるらしいじゃない」

「怖いねぇ、女子のネットワークってやつは」


ナツは息を吐いて、こてっと私の肩口に頭を載せた。

右半分が重くなる。


私はすぐそうやってはぐらかすナツの方が怖いよ、まったく。



「ねぇ、邪魔なんだけど」

「んー」


聞いてるんだろうか。


すぐに訪れた沈黙が重くて。

でも、肩口の重みの所為で動くに動けなくなった。



「ナツ」

「んー?」

「起きてるの?」

「半分くらい」

「寝ないでよ」

「お前はあれだよ。可愛いけど可愛げがないってやつ」


いきなりまた、何の話をしてるんだか。

っていうか、今、さらりと失礼なこと言ったよね?


ほんとにナツの思考は意味不明だ。


けれど、それっきり、ナツはまた喋らなくなってしまって。

何だかなぁ、と、私はどんよりとした空を仰いだ。

< 17 / 69 >

この作品をシェア

pagetop