その恋、取扱い注意!
「ああ……そうだった……敬一は今はやりのニューハーフの店を開業させ、負債を返そうと思っていたんだ。この業界は稼げると思ってな。だが、看板になるきれいなニューハーフがいない。そこで思い出したのは俺ってわけだ。負債を返そうと頑張っている敬一を見ていたら、見過ごせなくなったんだ」

いつの間にか車は高速道路を走っていた。

「それで女装を……?」

「金を貸すと言ったら、金は人から借りたくないと言われてな。敬一も本当はニューハーフじゃなくて、女装をしているだけなんだ」

アロマオイルの店での、美里ママの会話を思い出す。

私の子供産まない?って言われたんだよね。そうなんだ。美里ママは大変な苦労をしていたんだ。

「ま、それはここだけの秘密だぞ」

「うん」

「お前が来店した時は、心臓が止まるほど驚いたよ。しかも何度も食い入るように見るからバレたかと」

「見ていたのは、きれいな人だなと思ったからだよ。誰かに似ているとは思ったけれどね。湊に似ているなと思ったのは、翌日江の島に行った時。でも言ったら、思いっきりバカにされると思って言わなかったんだけど」

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