その恋、取扱い注意!

小声でお願いします

「はい。ありがとうございます。こちらへおかけください」

背後の棚から申込用紙を取り出し、高野先輩の前に置く。
ボールペンを握った高野先輩は、必要事項を記入し始めた。

婚約者の名前も書きこんでいるのを見て、今までの出来事は偶然だったのだと思い直す。

「行先はお決まりですか?」

「オーストラリアはやめて、ハワイに決めたよ」

書く手を止めて、私を見る。

「ご希望のお日にちも、お願いします」

「あ、ここね」

申込用紙を見て、最高級のホテルを希望しているのを確認し、端末にパッケージツアーの番号、日付を入力していく。

「延泊はよろしいでしょうか? このプランの金額ですと4泊6日になりますが」

端末から顔を上げて、高野先輩を見るとバチッと目が合う。

「ああ。それでいいよ。あまり長いのもね」

その言葉に私は内心驚く。

好きな人となら長く旅行したいって、思わないのかな。
私だったら、余すところなく訪れた場所を一緒に分かち合いたい。

そこで、ぽわんと湊の顔が浮かんだ。

っ! いやだ! なんで湊の顔が出てくるのよっ!

画面に集中し、コンピュータの回答を待つ。
< 66 / 437 >

この作品をシェア

pagetop