あふれるほどの愛を君に

確かBチームは、核果類を原料としたメイクアップ品を企画しているはずだった。

その話をしていたのも沢井さんだ。

それがいつの間にか、僕らと同じ海洋深層水を使った基礎化粧品の開発に変わっていたなんて。

沢井さんの話では、自分のせいで企画書を見られてしまったのではないかということだった。ある女子社員の手によって盗まれたのではと……。

四月にあった課の飲み会の後から沢井さんは、大島 実來(おおしま みく)という新入社員の女の子と親しくなっていた。

付き合っているわけではないらしいが、昼休みや終業後に揃って会社を出る姿を見かけたことがある。

それに二人の仲を噂する会話を何度か耳にもしていた。


「一緒に晩飯行った帰りにどんな部屋に住んでるのか見たいって言われて、一度だけ部屋にあげたことがあったんです。一日中外回りで汗かいた日で、しきりにシャワー浴びることを勧められて……。それで、彼女が帰った後になんか変だなと……。その日は企画書を持ち帰ってたんですけど、鞄の中から取り出そうとした時にあれ?って違和感があって……」


沢井さんがそう打ち明けた時、部屋の中でいくつもの溜め息が溢れた。

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