あふれるほどの愛を君に

「会いたかった」


ぽつりと言う。


「え?」

「めっちゃくちゃ会いたかったよ」


抱きしめる腕に力をこめる。


「大袈裟ねー、日帰り出張だったくせに」

「だって、金曜の夕方からずっと会えなかったから」


うなじの辺りで会話する僕に「くすぐったいってば」とサクラさんが身をよじった。


「あたしは何度かLINEしたよ?」

「あ、ごめん。見てないかも」

「かもじゃなくて、見てないんでしょ!」


向き合って確認しなくても、拗ねた彼女の顔を思い浮かべられる。


「ごめんね?」

「別にいいわよ。忙しかっただろうし、相当疲れてたみたいだから……。それに、超絶に可愛い寝顔見せてくれたから、許す!」


昨夜駅に着いた時、ちょうど日付が変わった時間だった。

もう遅いから、そのまま自分のアパートへ帰るつもりだったんだけど。タクシーの中から夜景を眺めていた僕は、やっぱりサクラさんに会いたくなって。

その気持ちが抑えきれなくなって、ここへ来て玄関扉を開けてくれた彼女をその場で抱きしめたんだ。

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