この空の下で風は唄う
蒸し暑さの中、あたし達の間を涼しい風が一瞬、吹き抜けた。

あたしは、洋平から目を離さずに、

洋平もあたしから目を離さずに、

数秒の(あるいは数十秒だったかもしれない)沈黙が流れた。

どう切り返すかしばらく考え、あたしは小さく首を振った。

「なにも隠してなんかいないよ」

「本当に? 小学校の途中くらいから、俺は風になにか壁みたいなものを感じるんだ」
「なんなの洋平。突然すぎ……」

「ずっと考えてた。君は、俺や竜太にだけじゃない、空に対しても、すごく大切にしているようだけどどこか壁を作ってる」

何時になく真剣な洋平が、吐き出すようにあたしにそうまくし立てる。
あたしは眉をひそめて、それに首を振ることしかできない。

「教えてくれ、風! 君が心配なんだ!」

いつも優しい洋平が、自分のことのように苦しそうにあたしを見た。
あたしは、胸のざわめきと息苦しさを感じて、ついに洋平から目を逸らした。

〈これ以上は、駄目だ〉

あたしの心がそう告げる。

「秘密なんてないから、だから洋平。そんなに苦しそうな顔しないで」

あたしのために苦しんでいるとしたら、そんなことは無意味だ。
いくら洋平が苦しんでくれたとしても、あたしの心は報われない。

「……本当に?」

「本当だよ。だから、もういいでしょ?」

洋平は、納得していないような表情を浮かべて、ひとつため息をついた。

「わかった、ひとまず今は何も聞かない」
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