【BL】夢見桜



「――おい、起きろ。起きろって、トキ!」



強い揺さぶりに俺は瞼を開けた。



「こんな所で寝たら風邪を引く。」


呆れたように呟く顔。



「……夢を見てた。」
「夢?」
「たぶん夢。なぁ、今って平成だよな?戦国時代とかじゃないよな?」
「あ、ああ…平成だけど。大丈夫か?」
「よかった。」



ほっと胸をなで下ろす俺を、心配そうな面持ちで見てくる。



「夢でさ、お前にそっくりな奴が出てきた。」
「俺に?」
「うん。名前も一緒だったよ。」
「変な夢だな。」


地面に座り込んだまま、俺は上を見上げた。



桜の木。



「にしてもトキは好きだよな、花見。毎年来たがるもんな。」
「上総は嫌い?」
「いや、好きだよ。嫌いだったら毎年付き合わないさ。」



隣に腰を下ろす、上総の手を握った。



「俺、上総が好きだ。ずっと……ずっと一緒にいたい。」



上総は俺を見て優しく微笑み、手を握り返してきた。



「知ってる。俺も好きだよ。ずっと一緒だ。」



そう言うと上総が触れるだけのキスを落としてくる。



「俺、幸せかも。」
「かもじゃなくて、幸せだろ?」
「うん。なぁ、知ってるか?俺と上総はずっと、ずっと前から結ばれる運命だったんだぜ。出会ったのは必然。この必然はきっと来世でも続いていくんだ。」



じゃあ、と上総は口を開いた。


「世界が滅びるまで、俺達は離れられないな。離す気もないけど」




†END†





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