星空の下で
俺の人生
『兄ちゃん!腹減った!』

『うん。雄輔!ちょっと待ってろよ』

107円しかねーじゃん。俺はいつもスーパーを何ヶ所か回り弟の雄輔と俺の食料を調達している。要は万引きだ。俺には罪の意識なんかねー。そんなもん感じてる暇はないんだ。毎日生きる為に精一杯なんだからな。俺はもう今年11歳だ。万引きを初めてやったのはわずか6歳だった。飴玉1つを握りしめ店を出た。これが悪い事だと言う事も理解していたさ。それでも俺は生きる為にもう5年も万引きを続けている。まだ1度も見つかってねーんだ。俺がプロなのか大人がバカなのかそんな事はどうでもいい。ただ毎日何か食える物を手に入れなければ弟の雄輔が腹をすかして待っているんだ。9歳の弟雄輔は俺が盗んできた食料だとは思ってはいないしあいつには俺みたいな事をさせたくはねー。俺は地獄に落ちる覚悟はとっくに出来てるぜ。神が俺を裁くならな。好きにしてくれ!

『おい!君!ちょっと待ちなさい!』

『待つわけねーだろ!バーカ!』

『ハアハア!待てって!俺は警察でも警備員でもない!ハアハア!君は走るの速いな!』

『ハアハア!しつけーな!おっさん!警察じゃねーならなんで追ってくるんだよ!』

『なんで万引きしたの?』

『はあ?欲しいからに決まってんじゃん!バカじゃねーの!おっさんには関係ねーだろ』

『まだ33歳なんだけど君から見れば充分おっさんか。慣れた手つきだったね。いつもやってるの?』

『そうだよ!俺はもうプロだ。これで食ってる!弟が腹をすかして待ってんだよ!もういいだろ!それとも警察に突き出すか?』

『いや突き出しはしない。君に親はいないの?』

『いるよ!いちおはな!ただ母ちゃんは1週間に1回帰ってくるか帰ってこねーかぐらいだ。父ちゃんはいねー!子供だけで生きてんだよ!これが俺達が生きる為の方法だ。わかったかよ!おっさん!同情なんかいらねーぞ!綺麗事なんかで腹は満たされねーんだよ!』

『ちょっと待てよ!君とこれからも話しがしたい。同情でもなけりゃ警察に突き出しもしないよ。ただ話しがしたい。ここの公園で19時から20時の1時間だけ君に会えるのを待っているよ。俺も仕事が不規則だから毎日はいないとは思うけど時間がある時はここでその時間帯に君を待つ事にする。君も毎日来なくてもいいし気が向いた時に来てもし俺がいたら話そう。君は10歳ぐらい?俺にも君と同じぐらいの息子のような子がいてね。忘れらない子なんだけどもう会うことがないから。もし俺の時間と君の気分が一致して会う事が出来た時だけでいい。神様の計らいに任せるよ』

『はあ?知らねー!何言ってんだよ!じゃあな!おっさん!』

なんだあのおっさん!不審者っぽくはなかったけど俺と話してどうすんだよ。息子代わりにしたいだけか。くだらねーな。のうのうと普通に生きてる奴は悩みもくだらねーんだな。こっちは毎日悩んでる暇もねーんだよ。飢え死にするかどうか命がかかってんだからな。

『雄輔!悪い!遅くなった!飯だぞ!食え!』

『遅いよー!兄ちゃん!何してたの?腹減って死にそうだよ!うわ!今日は唐揚げもあるじゃん!すげー!』

『あー。満腹になるまで食え』

『母ちゃん今日も帰ってこないのかな?』

『知らねー。いいじゃん。いてもいなくても一緒だよ。飯食ったら風呂入って寝ろよ』

『うん!わかった!』

家賃や電気、ガスの光熱費だけは母ちゃんの口座から引き落としされてるだけまだマシだな。食う事と衣服や必要な物の調達をするのが俺の仕事だ。酔っ払ってたまにくれるお小遣いと俺が万引きして調達してきた物で今までなんとか生きてこれたんだ。これからも生きられるだけ生きる。最悪は雄輔を楽にしてやらなきゃな。その後俺もいくよ。だから許せ雄輔。でも最後の最後までは頑張るからよ。

『おい!君!やっとまた会えたね!来てくれたんだな』

『暇だからな。取り引きしようぜ。俺がおっさんと話す間俺の時間を買え。俺はまだガキだから働けねーんだよ。おっさんは俺と話しがしたいんだろ?だったらその時間を買えよ』

『わかったよ。じゃあ俺は君に時給を払えばいいんだね?』

『あー!そうだ!前金だぞ!大人なんか信じてねーからな』

『前金って君はよく知ってるね。わかったよ。いくらいるの?』

『千円!』

『時給千円か。いいバイトだな。わかった。じゃあ千円。君の名前は?』

『大輔。11歳になる』

『そうか。やっぱり同じ歳か。今日は食べることが出来たの?』

『あー出来たよ。毎日違う所へ行くんだ。顔がバレるからな』

『考えてるんだね。学校は?』

『そんなもん行ってる暇はねーよ!近場ばかりじゃ無理だからな。チャリで遠くまで調達に行くには1日がかりだ』

『大輔くん!君は強いんだね。生きる事に負けないんだな。あいつも君ぐらい強く生きててくれたらいいんだけど。犯罪は犯してほしくはないけどね。大輔くん!空を見上げた事はある?』

『はあ?別にねーよ』

『見てごらんよ。今日はまだ都会にしては綺麗な星空だよ。七夕に星が見れて君にも会えるなんて運命かな』

『運命?神なんて不公平だ』

『そうだね。食う事にさえ困ってる君がいる中で贅沢に暮らしてる人もいるんだもんね。でも俺はきっと平等なんだと思うよ。思いたいね。君は今苦労しているけど大人になれば違うかも知れない。君ぐらいハングリー精神が強ければ強運も引き寄せそうじゃないか』

『大人になるまで生きれる保証なんかどこにもねーだろ。俺は毎日その日を生きるだけだ』

『君は生きるよ。そしてちゃんと大人になる。きっと君は誰よりも優しい人になるんじゃないかな。それだけ苦労を味わった人程いい人間になる。君はきっとそんな大人になってる気がするよ。俺が勝手にそう思うだけだけどね。君の言う通り人生には保証なんてない。いくら金を持っていても逆らえないさだめに人間は抗う事が出来ないからね。さあもうすぐ20時になるし時間だね。気をつけて帰りなさい。大輔くん!また会える時を楽しみにしているよ!』

『俺が生きていたらな!じゃあな!おっさん』

マジで千円払うか。ただ話しただけじゃねーか。でも俺達にはいい収入源だ。
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