穢れた愛


台所のシンクに凭れ
煙草を指先に挟み
見下ろす絵里の視線


「帰らないなら
 連絡してって
 言ってるでしょ」


項垂れる青柳へ
威嚇射撃が
噴射される


「折角 作ったのに
 無駄になるじゃない」


鰹の表面が
妖しげな光沢を
照らす刺身


「幾らだ」


青柳の言葉に
皿を下げた絵里は
生ゴミの中へ
刺身を棄て


「お金の問題じゃ
 ないでしょ」


不機嫌に
煙草をシンクの端で
捻り消した


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