穢れた愛
洗面台の水道を捻り
石鹸で手を洗い
指先の匂いを嗅ぐ
覚えたての
煙草の匂いが
不愉快に残る
洗いたての
タオルでさえ
洗面台に吊るさるだけで
不潔な異物に想え
夕夏は部屋から持参した
ハンドタオルで
掌を拭う
透明な硝子窓が
埋め込まる
リビングのドア
足早に通り過ぎる
夕夏の影に
不愉快な声が
届く
「夕夏ちゃん
ママ出掛けるからね」
返事もなく
夕夏は階段を
登って云った
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