恋の華が舞う季節
指輪が、スルリと離れ落ちる。


勢いよく転がる指輪を見ようともせずに、涙だけが落ちていく。


「……“あおい”って誰だ?」


「結衣……」


止まらない。


溢れる涙が。


あの頃の気持ちとか、初めて恋をした気持ちとかが、走馬灯のように駆け巡る。



「葵、葵……!」


もう、届かない。


届かないよ。



好きなのに、好きで溢れてたのに。



葵……!
どこに、いるの?

私はここにいるんだよ。

逢いに来てよ。


大切な人は貴方だけ。
愛しい人も貴方だけ。

この気持ちを崩さないで。

葵を消したくないの。
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