冷たい彼


「俺は沙彩が好きだ、悪ぃが今回だけは皇雅にも譲れそうにねぇわ」

じゃあな、そう言って結城さんはバイクで去って……行かなかった。

「あ、忘れてた。俺のこと『結城さん』じゃなくて蓮でいいから。後これ、俺のアド。じゃあな沙彩」

最後にかすかに笑って大きな音を残して結城さんは帰っていった。
…私、“モテキ”ってやつ!?
しかも不良特定の…シュン。

「…あれ?」

暖かい何かが手に触れた。
私は気付かなかった、自分の瞳から…“涙”がこぼれ落ちたことに。

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