あの日、あの夜、プールサイドで

◇かわいい妹・寧々




「コウにいたん!
ぷりんちょーだい!」


「ダメだよ、寧々。
さっき食べたばっかだろ??
夕飯終わるまではがーまーん。」


「ううー。いじわりゅ!!」




俺、吉良光太郎も生まれたときからこういう歪んだ性格になった訳じゃない。


最初はもっと優しかったし
神様だって信じてた。



俺が10才の頃
妹のように大事にしてたのは当時2才だった松浦寧々(マツウラ ネネ)


寧々は両親が薬事法違反で夫婦共々刑務所送りになってしまって。身寄りのなくなった寧々は警察づたいにこの光の子愛児園を紹介され、ここで保護されることになった。




最初はママに会いたいとダダばっかりこねて、みんなを困らせていた寧々。



なのに……
いつしか寧々はやたらと俺になついてくれて。ことあるごとにコウにいちゃん、コウにいちゃん、とつきまとう。



愛児園ではある程度の年齢になった男女は同室になることは許されず。それぞれ、4・5人で1つの部屋をあてがわれて寝起きするのが通例なんだけど……



「光太郎のことをこんなに好きなんですもの。寧々ちゃんはあなたがお世話なさい。」



静枝さんの鶴の一声により
俺と寧々は同室になり、おむつの世話から、食事の世話まで。職員の先生たちと一緒になって俺は寧々の世話をするようになっていた。




「コウにいたん、大好き!!」




俺を見つけると
いつもそう言って飛びついてくる、カワイイ寧々。


小さくて紅葉みたいに小さな手
プクプクのお餅みたいなほっぺ
くりくりの目は真ん丸でかわいくて、テケテケと歩く姿すら愛らしい。



夜寝る時には俺にピッタリくっついてコアラの親子みたいに寝る、俺と寧々。




カラダ越しに伝わる熱は、炎のように暑くて、冬場でもじっとり汗をかいてしまうけれど、その熱さすら愛おしい。



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