ツラの皮



付き人である母親に呼ばれ、ミレイはチェッと唇を尖らせながらも駆けていった。




「モテモテだな、清水」



っるせ。


嫌味ったらしいスタッフのからかいに俺は忌々しげに顔を顰める。


揶揄は何もミレイのことだけではなく、一昨日の一件も含まれている。






撮影は殆どスタジオか近郊の屋敷だが、一週間ほどは鄙びた山奥の別荘を借り切って行われている。


別荘は撮影用で、寝泊りは近くの温泉宿だ。


スタッフの特に男性陣は夜な夜な場末のキャバクラでドンちゃん騒ぎ。


俺は付き合いもそこそこに先に帰って寝ていた。


重鎮の役者は個室、または二人部屋なのに対しスタッフは雑魚部屋だ。


熟睡というわけでもなく布団も引かず畳みに大の字になって涼やかな山の風を満喫していた。



ウトウトと眠りかけ、ふと重みに気付いて目を覚ますと、女が俺に圧し掛かっていた。



幽霊などではなく、雑用として起用された新人の女子スタッフだ。


< 161 / 403 >

この作品をシェア

pagetop