ツラの皮



必要以上に語尾が強くなったのは、そんな事もあるかもしれないな、と心の中でちょっと雪乃の言い分を理解するトコロがあるからで。


例えば鈴が『英語出来る男ってカッコいいよねぇ』とか言い出したら、カラオケなんかで何気に英語の歌を選曲したり……しそうだ。






「真似したトコロで好きになってくれるなんて安直な事を考えてるワケじゃないけど。少しでも好みのタイプに近づきたいっていうささやかな努力だよ。」



それに、と言って雪乃は立ち上がった。





「高遠だって傍にいるなら、嫌いなタイプの『菅原雪乃』より、スキなタイプの『小早川鈴』の方が断然ウレシイでしょ?」




にぱっと笑って「撮影始まるみたいだから行ってくるね。」と雪乃は身を翻した。



恋愛じゃないにしろ、一緒に居るなら苦手なヤツより、気の合うヤツの方が、当たり前だがウレシイ。


………けど。





違うぞ。

なんか釈然としねーぞ!?







しかしともあれ、屁理屈合戦は俺の完敗で。




暫く、雪乃の“鈴ごっこ”は続くようだ。


< 318 / 403 >

この作品をシェア

pagetop