蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—


「―――野。吉野」

呼びかけられて、重たい瞼をゆっくりと開ける。
ぼんやりとした視界がとらえたのは、暗くて狭い空間だった。

完全に寝ていた私は、誰かに寄りかかっていたらしい。
咄嗟に「すみません」と謝りながら、ここがどこなのかを知りたくて顔を上げたところで、ようやく車の中だって事に気づいた。

「これでお願いします」

横からスっと伸びてきた手に驚いて振り向くと、五千円札を差し出す課長がいて……。
驚きすぎて声を出す事さえできなかった。

「じゃあ1450円お釣りですね」

どうやら課長と私が乗っているのはタクシーらしい。
助手席には誰もいないから、ふたりだけみたいだけど……さっきまで一緒だった松浦はどうしたんだろう。

っていうか、飲み会はもう終わったって事?
私、なんで寝てたの?







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