蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—


「私、帰れますからここで大丈夫です……!」
「そんなふらふらしててどうやって帰るんだよ。
今だって俺が支えてないと立ってられないだろ」
「大丈夫です! すぐタクシー拾いますから」
「無理だろ」

エレベーターの中に入ろうとする課長と帰ろうとする私で、引っ張り合いみたいになる。
最も、あがいているのは私だけで、課長は表情ひとつ変えずに片手で私の腕を掴んでいるだけだけど。

「私だってもう大人ですし、タクシーくらい拾えますっ」

心配されなくても、タクシーくらい普通に拾える。
そう強く言い切ると、課長は小さなため息を落とした。

「違う。そういう意味じゃない。
今の状態の吉野をタクシーにひとりでなんか乗せられないって意味。
真面目に働いてるタクシーの運転手には悪いけど、襲われない保障なんてどこにもないだろ」
「……それは、私が部下だからですか?」


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