蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—


ふふって笑う知美に思わず笑うと、「なにかおかしい?」って真顔で聞くからブンブン首を振る。
そんな私をじっと見た後、知美はにっこり微笑んだ。

「でも、もしかすると優花の忘れられない彼も、別れた事を今も後悔してたりするのかもしれないわね」
「そんな事ないよ。
あ、でも、優しい人だったから……私を傷つけたとか思ってたら、そこは後悔してるのかもしれない」

彼のつらそうに歪んだ顔が頭に浮かんで、思わず私も同じ表情になりそうになってしまう。

別れたのが彼のせいなんて事はまったくないし、私の事なんて気にする必要もないけど、本当に優しい人だったから。
もしかしたら、今も私に構ってくれるのは過去の事を気にしているからかもしれないなんて思いながらなんとか知美に微笑んで、ジョッキにつがれているビールに視線を落とした。


社会人になってから飲む機会が増えたビール。

今でもあまり美味しいとは思えないそれを初めて飲んだのは、大学一年の冬だった。






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