たとえ愛なんてなかったとしても
『毎日あなたのことを思っている人がいることを忘れないでね』


夜寝る前に、昨日届いた母親からの手紙を読み返す。


この言葉が本当だったら、良かったのに。

私だって、毎日あなたのことを思い出す。


生まれ育った国を離れて、家を出て。

今自分がどこにいるのか、何をしているのかも分からなくなるくらいの忙しい生活を送っていても。

それでも忘れた日なんて一度もない。


いっそ忘れられたら、楽になれるかもしれないけれど。


同じ文章を何度も読み返した後に、今まで送られてきた手紙と同じように専用の箱にしまった。


この手紙も、過去の思い出も全部捨ててやりたいと思うのに、それでも捨てることができないの。


ただ苦しめるだけの、私にはどちらも必要ないものであるはずなのに。
< 78 / 559 >

この作品をシェア

pagetop