きみくじ当てます
当たります




「久賀、久賀。起きろ久賀」


「ん、ん~?」


アズマに揺り起こされて、寝ぼけ眼で体を起こした。


「久賀の番だぞ、ほら」


アズマは俺の前に、ずいっと何本かの割り箸を差し出した。


くじ引きなんだそうだ。


えーと、確か?


文化祭でやる劇のお姫様役を、クラス一可愛いらしい河野梨花がやるってことで、その王子役をめぐってのくじ引きだった、

と思う。


「ムダだよアズマ」


「あ?」


俺は机に伏せて腕にあごを乗せてる状態で、アズマが握ってる割り箸の一本をつまんだ。


「どうせ俺が引いちゃうんだから、くじ引きなんか意味ねぇよ」


「何寝ぼけたこと言ってんだよ。そんなのわかんねぇだろ」


アズマが眉を顰めて言う。

その後ろで、クラスの男共がそうだそうだと騒いでいる。

まだ希望を持っているらしい。


「わかるんだって、ほら」


ひょいっとつまんでいた割り箸を引き抜いてやると、先っぽに生まれでた赤いインクのシルシ。


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