蒼碧
「総さんっ!」



エレベーターを降りたところで総の姿を捉えた。



「……安芸?」



怪訝な顔をして近寄ってくる総に、安芸は少しだけ苦笑いを零して手の中に大事に持っていた携帯を差し出した。



「忘れ物です」


「…安芸、」


「すぐに戻ります」


「あぁ、誰かきても」


「出ません」



2人で顔を合わせて、微笑み合う。



「じゃあ、行ってくる」


「車のところまで、見送ってもいいですか?」


「…すぐに、入るんだぞ?」


「心配しすぎですよ?」



苦笑いをする安芸に、なぜか総は不安を隠せなかった。


あれだけ一緒にいたのに、安芸が消えてしまいそうで恐かった。
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