蒼碧
そして安芸の傍に行き、膝を立てて、安芸の細い手を握りしめた。



「安芸さん…いえ、安芸」



その力強い声に、心臓が強く鳴り響き胸が揺れ動いた。



「迎えに行きます」


「総さん、たとえ上手く出れたとしても、母を見捨てては行けません」


「ですから、一緒に…」



安芸はゆっくりと、でも力強く首を振った。



「こうして週に一度総さんに会うだけで、私は……とても救われる想いです」


「…安芸」



総は、ゆっくりと安芸の背中に手を回し、抱き締めた。


この少女を温かな真綿のようなぬくもりで包んであげたい。


そして、その役目は自分でありたいと、強く思った。
< 80 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop