蒼碧
「今日は、あの、珈琲……を入れてみたんです」


「…和食なのに?」


「あ、えっと、……そうですよね」


クスクス、と笑う総さんに真っ赤になって、淹れたばかりの珈琲を下げようとすると



「ちょうど飲みたかったんだ。嬉しいよ。ありがとう」


「……総さん」


「こんなことで泣くなんて、本当に安芸はかわいい」



珈琲を片手に持ったまま、私を胸に抱いてくれる総さんに、少しだけ溢れた涙が止まらなくなってしまった。


ここに来てから、私は些細なことで泣いてばかり。


そんな私を総さんは、いつも笑って受け止めてくれる。


それがとても、嬉しくて幸せだった。



「じゃあ、行ってくるよ」


「はい、いってらっしゃい」


「安芸、誰かきても?」



最近では、合い言葉のようになってしまったこの言葉に、安芸は小さく笑みを零す。



「でません」


「そう、いい子だな。今日は早く帰るから、一緒に買い物に行こう」


「はいっ」
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