恋愛指導は秘密のくちづけで
中西さんがその日、社内のひとりも残さずに話を広めるのには時間はかからなかった。


「柏葉さん、災難だったね」


昼休憩のとき、食事をとるために隅っこに座っていたわたしを見つけて声をかけてくれたのは原田さんだった。


「よりによって中西さんになんかに見つかるなんてね」


「……うん。まあしょうがないよ」


「言いふらして何が楽しいんだろうね」


「そうだね……」


別の業務をやっている男性社員からのいわれなくても変な視線を注いでくるのがいたたまれなかった。
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