星月の君






 一度そう思ってしまうと、なかなか思いは消えない。


 恋文のやりとりではない。
 男女の文やりとりといったら、誰もが"恋文"を想像する。だが私と彼女との間にはそういったものがない。ただ、日常のことだけを。感じたことを共有し、分け合うだけ。それがたまらなく、心をひりひりさせる。

 あいつは目敏く何かに気づいてこんな文を送ってきたのか。
 この文にある歌はちょっと有名な歌であるのだ。
 

 ああ、まったく……。



 私の"これ"はそんなものじゃない。
 そう何度も思った。

 まだまだ山吹のことが夢にでて魘されるようなら私だ。そんな私が、恋などしているはずがない。


 私は気づきたくないと"それ"に目を背ける。






  * * *





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