ベストマリアージュ
まだローンも残っていたし、売りに出してしまえばいくらも残らないのだけれど、彼が全部それを私にと言ったのを丁重に断った。


最後まで対等でいたかったし、子供もいないのだから慰謝料なんて貰うつもりもなかった。


だから売れて手元に残ったお金は二人できっちり分けた。


あの衝撃告白をされた日から、離婚届を提出して、引っ越し、マンションの売買、もろもろが完成するまでに、冬だった季節は移り変わり、もう夏真っ盛りを迎えてる。


両親には泣かれるし、同居も言いづらかったけど、なんとか実家に落ち着いたところだ。


部屋は私がまだいた頃と変わらずに置いてくれていて、運び込んだ荷物の少なさに苦笑しながら、またここで暮らせる幸せを噛み締めていた。


< 10 / 307 >

この作品をシェア

pagetop