ベストマリアージュ
実家にお世話になってる時点で、出戻りの娘に拒否権はないのだと、私はガックリ肩を落とした。


「わかったわよ、行けばいんでしょ?行けば」


「そっ、よろしくね?

さとしくん仕事忙しいみたいで、明日は久しぶりに休みなんだって

だから美味しいもの作ってあげてね?

あんたも一応、主婦だったんだし、料理くらい出来るでしょ?」


母の嫌味が加速しそうな気がして、私は慌てて話題を変えた。


「どこの温泉に行くの?」


「近場よ?鬼怒川」


「温泉まんじゅう、買ってきてね?」


「了解、あんたも久しぶりのご飯作り頑張ってね?」


せっかく話題を変えたつもりだったのに、母の方が一枚上手だと苦笑いしながら、はいはいと頷いた。


確かに実家に戻ってきてからは母におんぶにだっこだったのだから、仕方がない。


私はようやく覚悟を決めて、明日は何を作ろうかと、ぼんやり頭の隅で考えた。


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