ベストマリアージュ
ようやく私の異変に気づいたさとしが、フッと顔を遠ざけた。


その瞬間、私は大きく息を吸い込む。


新鮮な空気が肺に送り込まれ、何度か深呼吸すると、なんとか心臓のバクバクしていた音が静かになった。


「なにやってんの?お前」


怪訝な顔でさとしが私を見る。


「や、……あの、はぁ……息、止めてた……」


「はぁ?なんで?」


「だって……はぁ、顔が……近かったから……」


一瞬、さとしが驚いたような顔になった。


でもすぐに、いつもの意地悪な顔に戻る。


「俺があんまりカッコイイから緊張したんだろ?

ま、それはしょうがないな」


相変わらずナルシストだ。


でも反論するのも面倒くさくて、適当にあしらう。


「そうだね?その通りだよ」


「なんだよ、その棒読みは!」


すかさず突っ込みが入り、私はくすりと笑ってしまった。


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