温め直したら、甘くなりました

「自分で、歩けるから……」



マンションに着くと、茜はそう言ってふらふらエレベーターに向かっていく。



「大丈夫な奴がそんな歩き方をするか。もっと頼れよ……ほら、肩」



俺が無理矢理肩を貸すと、茜はぽつりと呟いた。



「だって……今までは、頼りたいときにいてくれなかったじゃない」


「……茜」



いつも強気な茜の本音を、そのとき聞いたと思った。


一人で店を営み、家事もそつなくこなし、俺が居なくたって一人で自由に生きていたように見えていた茜だけど……



「ごめん……寂しかった、よな?」



静かに俺が問いかけると、茜は小さく頷いた。

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