温め直したら、甘くなりました

「なに!?ということは、きみも天秤座か、俺もだ!!今日は散々な一日じゃなかったか?俺は黒猫とカラスと女子高生が怖くてもうトラウマになりそうだ」


「……仕入れたトマトを落っことして潰したり、配達出ようと思ったら軽トラのガソリンがカスカスで焦ったり、確かに最悪な一日でした。まあ、茜を奪われたのが一番きついですけど……」


「おお、同志よ!きみとは仲良くできそうな気がする」



俺は片山聖司の手を無理矢理握って、固い握手を交わした。

天秤座同盟、ここに誕生す!


興奮する俺とは温度の違う微妙な表情で、片山聖司は茜にこう声を掛けた。



「……茜、お前のダンナ、いつもこんなんなの?」


「ええ、だいたい。さっきまでの自分を消し去りたいほど今羞恥心に襲われてる……」



茜は両手で顔を覆って背中を丸めた。


――消し去る必要なんてない。茜は認めたくないようだが、俺たちはかなり結婚した当初の熱が戻ってきていると思う。


“茜を嫉妬させよう作戦”は失敗に終わったが、黒田凜子という他人を介入させようとした俺がばかだったんだ。


次はもうただ二人で、ゆっくりと、愛を深めようじゃないか。


今夜は風呂を沸かして、どこか有名な温泉地の入浴剤でも入れて茜の帰りを待っていよう。

そう、次の作戦は……“茜とお風呂でにゃんにゃん”だ!!

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