怖がりな兎さんとからかう狼さん
 私はどんな表情をしているのだろう。怒りや恥ずかしさがこみ上げてくる。

「自分が今、どんな表情をしているかわかるか?」
「そんなの、わかりませんよ」

 海翔先輩の機嫌がいいのが見てすぐにわかった。

「可愛らしい表情」

 一人でパニックになっているのを見て、先輩は腹を抱えて笑っている。
 親子丼を食べるペースが急激に変わった。
 昼食後はめったに体験できないようなことをしたり、花景色を楽しんだりした。
 お土産を買うときは可愛らしく、好みのものがいくつもあったので、迷っていたが、先輩がお金を出してくれた。
 もうすっかり日が暮れた。電車に乗って、座席に腰をおろしていた。

「足痛いですね。たくさん歩いたから・・・・・・」
「俺に家までおぶって欲しいっていうお前なりのおねだりか?」
「何で私を困らせるようなことばかり言うのですか?」

 海翔先輩は溜息を吐いていた。

「先輩も疲れました?」
「そうじゃなくて、本当に素直にねだったら、もっといいのにと思っただけだ」
「そんなことしません」
「いずれ言ったら、面白そう」

 私の隣に座っている狼は私を怖がらせるのが得意だと、改めて思った。
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