バイバイ南

 「百回死んでこい」

 ドアをあけると、病院食をひっくり返して南(みなみ)が怒鳴った。

スプーンと箸が飛んでくる。

別によける気はなかったけど、床に散乱した皿やごはんを拾うために屈んだから、結果的には南の怒りのこもったそれらにあたらずに済んだ。

「来るなって言ったじゃん」

南はベッドの上で低く呟き、ぼすぼすと枕を殴り始めた。

 いつものことだ。ちょっとでも気に入らないことがあると、あたり散らす。

 一ヶ月前、入院してから始まったこの駄々っ子症候群のせいで、南の見舞いに来る高校生、つまり同級生は、今では幼馴染みという位置に収まっている僕こと品川(しながわ)正直(まさなお)ただ一人になってしまっていた。

 自業自得だけど、寂しくはないだろうか。

 食器を片し、窓際に吊るしてあるハンガーから雑巾をとった。

 スープや野菜のクズをできるだけきれいに拭き取って、ため息をつく。
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