二面相
祖母は いわゆる戦争未亡人。


祖父にあたる人が戦死したのは、私の父が お腹にいる時だった。

そこから 苦労をして、女手ひとつで 父を育ててきた祖母は、私の良き理解者だった。



「本当に好きな人の子供なら、産んだらいいじゃないか」



祖母の言葉が迷う私の心を後押ししてくれた。


祖母が 父を産んだのも、18のときだ。以来、結婚もせず、祖父のことだけを思い、生きてきたのだろう。


だが 父は 私生児だった。

祖母は、私と同じように結婚をせず、愛する人の子供を産んでいたのだ。


それを知ったのは 祖母の葬儀の日のことだ。



祖父母の間に、どんな事情があってそうなったのか、聞けぬまま祖母は旅立っていった。



祖母の葬儀の席で初めて、私の両親と 息子は顔を合わせた。


以来、時々実家には帰っているが、まだ家族は、私の生き方を納得したわけではない。


このような形で実家に逃げるように帰っては、家族に「それみたことか」と言われるに違いない。



< 24 / 42 >

この作品をシェア

pagetop