二面相
「麻子さん、まあ大樹くんも。今日は?」


兄嫁は 妊娠中の大きなお腹を抱え、顔を引き攣らせながら 笑顔を作っていた。



彼女は 長男の嫁。すっかりこの家の 人間だ。彼女からしたら 私はよそ者なのだ。



「お久しぶり、お義姉さん。ウチの親は?」



「子供達連れて 海に散歩よ。お義父さん、定年されてから、まあすっかりいいおじいちゃんぶりで……」


「兄さんは?」



「……仕事」




「日曜日っていうのに、あいかわらずね。……上がっていいかしら?」


「あら、ごめんなさい。どうぞ」


と 大きなお腹を大儀そうに抱えて しゃがんでスリッパを出した。


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