月下の誓約

 12.目覚め



 前線部隊の帰還と共に、午後には全部隊が、砦の警備部隊を残して城下へ凱旋した。
 城に戻った和成は、塔矢から処遇が確定するまでの謹慎を命じられた。

 丸二日眠っていない和成は、さすがにその夜は何も考えず泥のように眠った。

 翌朝、いつもより少し遅れて目覚めた和成は、慌てて飛び起きた。
 しかし仕事に出なくていい事を思い出し、再び寝台の上に身体を倒す。

 昼間に自室で一人きりの時を過ごすのは、久しぶりだ。
 あとどれだけ時間があるのかわからないが、このままぼんやりしているのももったいない。

 処刑される前に読みかけの本を読み切ってしまおうと、寝台から起き上がった。

 顔を洗い身支度を調えて机の前に座る。
 本を開こうとした時、机の端に置かれている右近から借りた手ぬぐいが目に入った。

 何気なく広げてみて思わず吹き出す。
 手ぬぐいの三分の一にでかでかと右近の名前が書かれていた。
 筆を取り、名前の横に一言言葉を書き添えて手ぬぐいをたたむ。

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