月下の誓約

 10.月見酒



 今宵も空はよく晴れている。

 和成は半分ほど酒の入った湯呑みを持って、自室前にある中庭へと降りる石段に腰掛け月を眺めていた。

 月は日に日に笑顔をほころばせる。
 もうすぐ半月、上弦の月。

 一口酒を飲むと、月を見上げてつぶやいた。


「俺は人形かぁ……」


 右近には命を与えられたばかりの人形だと言われた。

 佐矢子には頭に電算機の詰まった機械の人形だと言われた。

 自分なりに考えて、それは”心がない”という意味ではないかと思った。
 実際に心がないわけではない。
 他人の心が理解できていないのだ。



「正直で勇敢で優しい心を手に入れたら人間になれる……それってどういう意味だろう」


 片膝を立て、その上で頬杖をつく。

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